カテゴリー「書籍・音楽・映画」の42件の記事

ジェノサイド

1110291久しぶりにミステリーの大作を読んだので、ブログの方も久しぶりに更新。

この本を手にしたのは、仕事のミーティング中に上司が面白いと絶賛していたのがきっかけ。というのも、主人公の一人が有機合成化学を志す大学院2年生で、あるきっかけから希少疾患の薬を単独で合成するという設定から、製薬会社の合成系研究員としては共感を覚える部分もあり入り込みやすい。

一方、著者は有機合成化学、創薬化学とは無縁ではあるものの、謝辞を見ると、長瀬博北里大学教授をはじめとする創薬化学の著名な先生方が関わっていたようで、実験の描写などはこちらがニヤッとしてしまうほど、マニアックなことまで描かれている(カラムの展開溶媒とか・・・、必要か?)。

そして、もともと成り行きで合成化学の道を選んでいた主人公がこれまでに知られていない反応を経て新薬を合成し、その効果を確認した瞬間に味わった、

”寒気を覚えるほどの感動とともに、不思議な陶酔感”

この部分は研究者の心理を実によく表現しており、読みながら自身の経験も思い出されて非常に印象に残っています。

さて、作品全体のキーワードとして”人知を超えた知能”というのがあります。従来の作品ではそれを宇宙人などの地球外生物としていたところを、本作品では人間の進化の過程における突然変異としているところからいろんな話が展開し、”あり得ないことではない”と思わせるところが面白いところ。”アメリカのホワイトハウス”、”アフリカ・コンゴのジャングル”、そして”東京のボロアパート”での展開が目まぐるしく交錯することで、読んでいてとてもスピード感があります。

フィクションを久しぶりに読んで思ったのですが、ミステリー作家というのは、話の設定からトリックの伏線、そして最後の”落ち”までの、どこまでを考えてから書き始めるのでしょう。一つ一つが矛盾なく伏線としての意味を持たせる一方で、フィクションだからと言ってあまりにも現実離れしていては読者も冷めてしまうし。。。

これだけ幅広いテーマを取り扱えば、それぞれの分野の専門的な知識も必要であろうし、想像力を働かせながら”あり得ないことではない”と思わせるさじ加減も非常に難しい気がします。

著者自身も、”人知を超えた知能”にかなり迫っているのではないかと思わせるほど。

本作品はアタリです。

世界は分けてもわからない

110181 世界は分けてもわからない 福岡伸一 著 / 講談社現代新書

プロローグ パドヴァ、2002年6月
第1章 ランゲルハンス島、1869年2月
第2章 ヴェネツィア、2002年6月
第3章 相模原、2008年6月
第4章 ES細胞とガン細胞
第5章 トランス・プランテーション
第6章 細胞のなかの墓場
第7章 脳のなかの古い水路
第8章 ニューヨーク州イサカ、1980年1月
第9章 細胞の指紋を求めて
第10章 スペクターの神業
第11章 天空の城に建築学のルールはいらない
第12章 治すすべのない病
エピローグ かすみゆく星座


これまで福岡伸一の作品は二冊ほど読んだことがありますが、外れがないですね。本当におもしろいです。

科学系読み物に分類されるのでしょうが、各章の導入は、絵画であったり写真やジグソーパズルであったり。。。一見科学とは関係ない概念も、読み進めるといつしか科学にも重なる部分がある。

そして各章にちりばめられた概念は、エピローグですべてがつながり、ふっと腑に落ち思わずニヤリとしてしまう。

文章の読みやすさもさることながら、私はこういった構成が好きなのでしょう。

第8章から第12章は1980年代初頭に起きた分子生物学におけるある捏造事件について書かれています。エフレイム・ラッカーと聞いて、その分野の人ならピンと来るのでしょうか。著者の巧みな描写も相まって、その部分は推理小説さながら。

これまで読んだ”動的平衡”、”生物と無生物あいだ”もそうですが、キーワードとなるのは”動的平衡”。

あらゆる生命現象は動的平衡のもとに成り立っている。その一部分を切り取らないことには何も分からないが、切り取ってしまっては全体はわからない。

そんな意味が込められたタイトルだと思うのだが。。。

内容は抜群だが、タイトルだけはもうちょっとピンとくるものが無かったのかと残念に思います。

ちょっとだけ

1101081_4 ちょっとだけ 瀧村有子作 / 鈴木永子絵 福音館書店

妹が娘にお年玉としてプレゼントしてくれました。

赤ちゃんが生まれ、お姉ちゃんとなった主人公”なっちゃん”。ママが忙しいので、手をつなぐのを我慢したり、一人で牛乳を飲んだり、自分でパジャマに着替えたりと頑張るのですが、時にはママに甘えたくなっちゃうよね。

そんななっちゃんへの母親の愛情と、しっかり甘えた後は赤ちゃんを可愛がるなっちゃんの姿が印象的でした。

一番最初に私が読んでやったのですが、妻はもちろんそばで聞いていた義母まで涙ぐんでいました。不覚にも、私も”ちょっとだけ”・・・。

当の本人は、主人公と自分の名前が同じということだけで気に入ったのか、この先自分にも科される試練とも知らず、毎晩のように”読んで読んで”とせがんできます。

すてきなプレゼントをありがとう。

これからの「正義」の話をしよう~いまを生き延びるための哲学~

100925a1 これからの「正義」の話をしよう~今を生き延びるための哲学~ マイケル・サンデル 著 / 鬼澤忍 訳 早川書房

以前紹介したハーバード白熱教室の書籍版。

1人を殺せば5人が助かる状況があったとしたら、あなたはその1人を殺すべきか? 金持ちに高い税金を課し、貧しい人びとに再分配するのは公正なことだろうか? 前の世代が犯した過ちについて、私たちに償いの義務はあるのだろうか――。

そんな帯に書かれた言葉を見て、本書を手に取りました。

功利主義にリバタリアニズム、カントにロールズ、アリストテレスと、バリバリの理系であった私にとって政治哲学は無縁の世界でしたが、今回ハーバードの学生と共に(?)サンデル教授の授業を(テレビを通して)受けながら、何とか自分なりにかみ砕いてみたつもりです。

サンデル教授の授業では古今の哲学者の考えを吟味しながら具体例を挙げ、積極的に学生に意見を求め、その反対意見にも耳を傾けつつ、学生達に活発な議論を促していきます。

さすがハーバードの学生、ディベート力とその意見の内容はハイレベルで、さらにそれをうまくコントロールしながらテンポ良く授業を進めるサンデル教授に人気が集まるのもうなずけます。

私個人の”正義”とは、これまで生きてきた中で培われた価値観や道徳に基づきある一定の判断基準であるわけです(そこまではOK,そこからはNGみたいな)。ただ、書籍や授業を通して投げかけられる難題(累進課税、徴兵と傭兵、代理出産、人種差別、愛国心と戦争責任、同性婚)を前にすると、そのぼんやりとした判断基準が何を根拠とするものだったのか自信がなくなってきます。

同時に、自分の判断基準を異なる価値観や道徳を持つ人にうまく表現する力を身につける必要があるとも感じました。

この授業が行われたのはアメリカです。アメリカには様々な宗教を信仰する様々な民族が共存しているわけですから、単一の判断基準を設定することは至難の業です。

活発な議論が出るよう誘導してきたサンデル教授は、授業の最後で”議論をしても結局意見の一致を見ることはない”と述べる一方で、それでも互いの道徳的・宗教的信念に注意を向け論争し、学び合う公の討議が必要であると語っています。

日本は単一民族国家かつ島国であるため、個人の価値観の衝突は比較的少ないかもしれず、そのような議論には不慣れなのかもしれません。それにしても・・・。

昨今の中国船船長の釈放に関する政府の対応を見るにつけ、”日本の正義はどこに!?”と叫びたくなる気分です。

もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら

1006301 もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら 岩崎夏海 著 / ダイヤモンド社

”もしドラ”の愛称で結構売れてるようです。装丁のギャップも目を引き、手に取りました。

ビジネス書でありながら、内容は無名の公立高校野球部が「マネジメント」をもとに甲子園を目指すというストーリー。

単なる小説であったらB級かもしれません。しかし、そこにドラッカーの「マネジメント」が介在することで、野球部での出来事が職場での身近な出来事にリンクし、いつしかストーリーにのめり込んでいき、最後に心地よい感動を覚えました。

印象に残ったところとしては、、、

”甲子園出場”というとてつもなく高い目標に向かって、チームが一丸となり皆本当によく努力した。そして夏の大会前、ある人物が”たとえ途中で負けたとしてもいいじゃないか。大切なのは結果ではなくプロセスだ”というシーン。

一方、「マネジメント」には、

組織構造は、組織の中の人間や組織単位の関心を、努力ではなく成果に向けさせなければならない。(中略)成果よりも努力が重要であり、職人的な技能それ自体が目的であるかのごとき錯覚を生んではならない。

とあり、主人公はあくまでも甲子園にこだわると共に、著者も最終的に”野球部が結果を出す”ストーリーに仕上げている。

成果主義は私の職場でも随分浸透して来てはいるが、研究という職業柄、限られた期間での成果は努力しても運であったりタイミングといった不可抗力に左右されることが多く、働いている側としては努力は認めてほしいという甘えが生じがちだ。

それだけに、組織を「マネジメント」する上でのこの言葉はとても重く感じた。

ドラッカーのビジネス書が改めて見直され、多くの人に身近なものと感じさせる良書。

ただ、装丁はともかく(斬新さを売りにするという意味で)、同じタッチの挿絵は”あやしい”類の本と間違われ、電車で読むのに憚れるので不必要。

もういちど読む山川日本史

1006261 もういちど読む山川日本史 山川出版

一時、戦国時代や幕末の歴史小説にはまったきっかけから、書店で見かけるこのシリーズが気になっていました。

高校時代は世界史選択だったので、私にとっては”はじめて読む山川日本史”でしたが・・・。

理系の私にとって”社会科(世界史)”は、センター試験でいかに点を落とさずやり過ごすか、”苦労した”だけの教科に過ぎませんでしたので、まさかこの歳になって自発的に読み直すことになろうとは、高校時代の私からは想像もつきません。

総じて言えば、教科書とはいつ読んでもそんなにおもしろいものではないですね。まあ、ページ数の限られた一冊に広く浅く史実情報を詰め込むのは至難の業とは思いますが。一方で、数多くの参考書が出版されている理由がよく分かります。

結局歴史への興味とは、ある特定の時代から入っていって、そこから深く徐々に広く掘り下げていくものなんでしょう。歴史好きと言われる人にも必ず”専門の”時代というのが存在するように。

もちろん、興味深い点もいくつか。

かつて”足利尊氏像”として習った、黒い馬にまたがり鎧を着てひげを生やした武将の絵。その後の研究で全く別人である説が有力となり、現在は”騎馬武者像”とされているとか。

歴史も多くの研究者のおかげでどんどん書き換えられているんですねぇ。

自分が習った頃からさらに加えられた部分もあり、懐かしさと共にそういう違いを発見する点では結構おもしろいかもしれません。

医薬品クライシス

1004221医薬品クライシス” 佐藤健太郎 著 / 新潮新書

ちょっと前にNHKで放送していた”追跡!A to Z 新薬が生まれない”に出演していた著者。

大手医薬品メーカー(聞くところによるとE社?)の研究職を経て、2009年より東京大学大学院理学系研究科広報担当特任助教という経歴も気になり、本書を手に取った。

前半は薬が効く仕組みから製薬業界の話題について述べられ、”奇跡、ギャンブル、非常識”といった言葉に象徴されるように、特殊な業界であることを説明している。

後半は研究職であった経験に基づく視点から、新薬が出なくなった理由の一つとして”研究職の成果主義”をあげている。短期的な成果に走ることで研究者が小粒になり、”闇実験”をしなくなった(暇が無くなった)と。

私が入社して間もなく成果主義は導入されたが、過去にものを出した諸先輩方の伝説と比較すれば確かにそういえなくもない。

Googleは社員に、本業(80%)の他に新しいアイデア(20%)にも時間を費やすことを課しているという。

製薬業界でこれと同じことをやれば、相当話題となるだろうが。そんな体力、どこの製薬会社にもないか・・・。

男子ごはんの本 その2

”男子ごはんの本 その2”を購入しました。

パラパラ見ていくと、作ったことのあるレシピもちらほら。改めて挑戦してみたいレシピをチェックしたりして。

番組も毎週見ているし、レシピも無料でネットから調べられるのに、それでも本棚に並べいつでも手の届くところにおいておきたい・・・。

iPadの発売で電子書籍も話題となっているが、単なる情報としてではなく、製本された一冊の本としての価値があるものには、これからも消費者はお金を払い続けるはず。。。

座右の銘

1003271_2 座右の銘~意義ある人生のために~ 「座右の銘」研究会 編 / 里文出版

1  人生を最高に生きるために
2  人間について理解する
3  自己を理解する
4  生き抜くための能力
5  心を豊かに持つために
6  愛のある人生を生きるために
7  男と女の世界
8  人に好かれるために
9  道を開く
10 希望の明日のために

”「座右の銘」研究会”なんてのがあるんですね。

テーマ別に並んでおり、そのときの気分によって先人達によるありがたい言葉にたどり着ける良書。

我が家のトイレ文庫に加わりました。

生き方

1003261 生き方~人間として一番大切なこと~ 稲盛和夫 著 / サンマーク出版

第1章 思いを実現させる
第2章 原理原則から考える
第3章 心を磨き、高める
第4章 利他の心で生きる
第5章 宇宙の流れと調和する

JALの会長に就任してからというもの、書店には”稲盛コーナー”が常設されるなど、改めて著者の書籍が注目を浴びている。その中から一冊。

”何のために生きるか。それは生まれたときよりも少しでも善き心、美しい心になって死んでいくこと”。

いきなり坊主の説教かと思いましたが、実際著者は仏門に入り、僧名までいただいているとのこと。京セラ、DDIを設立し一代で世界的な企業へと育て上げたカリスマ経営者は、実は坊さんだった。

”人として正しいか?”。会社を経営する上で究極のコンプライアンスかもしれません。

昨日の新聞に、JALが社員向けの無料・割引航空券を廃止するという記事が出ていました。当日空席があった場合にのみ利用できるなどの制限があり、廃止しても収益を押し上げる効果は限定的とされているが、

”更正手続き中の会社で社員が特権を持ち続けるのは社会の理解を得られない(日航幹部)”

とのコメントがあり、本に書いてある通りの稲盛イズムを感じました。

2015年10月
        1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 31
無料ブログはココログ