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2011年10月の1件の記事

ジェノサイド

1110291久しぶりにミステリーの大作を読んだので、ブログの方も久しぶりに更新。

この本を手にしたのは、仕事のミーティング中に上司が面白いと絶賛していたのがきっかけ。というのも、主人公の一人が有機合成化学を志す大学院2年生で、あるきっかけから希少疾患の薬を単独で合成するという設定から、製薬会社の合成系研究員としては共感を覚える部分もあり入り込みやすい。

一方、著者は有機合成化学、創薬化学とは無縁ではあるものの、謝辞を見ると、長瀬博北里大学教授をはじめとする創薬化学の著名な先生方が関わっていたようで、実験の描写などはこちらがニヤッとしてしまうほど、マニアックなことまで描かれている(カラムの展開溶媒とか・・・、必要か?)。

そして、もともと成り行きで合成化学の道を選んでいた主人公がこれまでに知られていない反応を経て新薬を合成し、その効果を確認した瞬間に味わった、

”寒気を覚えるほどの感動とともに、不思議な陶酔感”

この部分は研究者の心理を実によく表現しており、読みながら自身の経験も思い出されて非常に印象に残っています。

さて、作品全体のキーワードとして”人知を超えた知能”というのがあります。従来の作品ではそれを宇宙人などの地球外生物としていたところを、本作品では人間の進化の過程における突然変異としているところからいろんな話が展開し、”あり得ないことではない”と思わせるところが面白いところ。”アメリカのホワイトハウス”、”アフリカ・コンゴのジャングル”、そして”東京のボロアパート”での展開が目まぐるしく交錯することで、読んでいてとてもスピード感があります。

フィクションを久しぶりに読んで思ったのですが、ミステリー作家というのは、話の設定からトリックの伏線、そして最後の”落ち”までの、どこまでを考えてから書き始めるのでしょう。一つ一つが矛盾なく伏線としての意味を持たせる一方で、フィクションだからと言ってあまりにも現実離れしていては読者も冷めてしまうし。。。

これだけ幅広いテーマを取り扱えば、それぞれの分野の専門的な知識も必要であろうし、想像力を働かせながら”あり得ないことではない”と思わせるさじ加減も非常に難しい気がします。

著者自身も、”人知を超えた知能”にかなり迫っているのではないかと思わせるほど。

本作品はアタリです。

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