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これからの「正義」の話をしよう~いまを生き延びるための哲学~

100925a1 これからの「正義」の話をしよう~今を生き延びるための哲学~ マイケル・サンデル 著 / 鬼澤忍 訳 早川書房

以前紹介したハーバード白熱教室の書籍版。

1人を殺せば5人が助かる状況があったとしたら、あなたはその1人を殺すべきか? 金持ちに高い税金を課し、貧しい人びとに再分配するのは公正なことだろうか? 前の世代が犯した過ちについて、私たちに償いの義務はあるのだろうか――。

そんな帯に書かれた言葉を見て、本書を手に取りました。

功利主義にリバタリアニズム、カントにロールズ、アリストテレスと、バリバリの理系であった私にとって政治哲学は無縁の世界でしたが、今回ハーバードの学生と共に(?)サンデル教授の授業を(テレビを通して)受けながら、何とか自分なりにかみ砕いてみたつもりです。

サンデル教授の授業では古今の哲学者の考えを吟味しながら具体例を挙げ、積極的に学生に意見を求め、その反対意見にも耳を傾けつつ、学生達に活発な議論を促していきます。

さすがハーバードの学生、ディベート力とその意見の内容はハイレベルで、さらにそれをうまくコントロールしながらテンポ良く授業を進めるサンデル教授に人気が集まるのもうなずけます。

私個人の”正義”とは、これまで生きてきた中で培われた価値観や道徳に基づきある一定の判断基準であるわけです(そこまではOK,そこからはNGみたいな)。ただ、書籍や授業を通して投げかけられる難題(累進課税、徴兵と傭兵、代理出産、人種差別、愛国心と戦争責任、同性婚)を前にすると、そのぼんやりとした判断基準が何を根拠とするものだったのか自信がなくなってきます。

同時に、自分の判断基準を異なる価値観や道徳を持つ人にうまく表現する力を身につける必要があるとも感じました。

この授業が行われたのはアメリカです。アメリカには様々な宗教を信仰する様々な民族が共存しているわけですから、単一の判断基準を設定することは至難の業です。

活発な議論が出るよう誘導してきたサンデル教授は、授業の最後で”議論をしても結局意見の一致を見ることはない”と述べる一方で、それでも互いの道徳的・宗教的信念に注意を向け論争し、学び合う公の討議が必要であると語っています。

日本は単一民族国家かつ島国であるため、個人の価値観の衝突は比較的少ないかもしれず、そのような議論には不慣れなのかもしれません。それにしても・・・。

昨今の中国船船長の釈放に関する政府の対応を見るにつけ、”日本の正義はどこに!?”と叫びたくなる気分です。

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書籍・音楽・映画」カテゴリの記事

コメント

思わずこの本を読んでみたくなるような紹介文ですな。
今、ちょっと時間がないので、少し余裕が出来たら購入してみようと思います。
個人の倫理観が育った環境に大いに影響されるのは頷けますが、生物学者としては、それでもどこかに統一的な原理、即ち「倫理は進化で説明できるか?」ということに興味があります。
まあこちらもなかなか結論は出ない世界だと思いますが、こういった進化生物学的な疑問が、ゲーム理論などの発展に寄与していく過程を思い起こすのもなかなか勉強になるものです。

是非読んでみてください。もともと哲学的な考え方の鴨川ならもっと深いところまで理解できるはず。そして、お互いの”正義”について議論しましょう。
哲学と言えば、以前もらった”14歳からの哲学”という本を思い出し、もう一度読み直してみようと思っています。

14歳からの哲学を紹介したのはすっかり忘れていました。
お薦めする、入りやすい哲学書は、「流れとよどみ(大森 荘蔵、産業図書)」です。この本は、「哲学的諸問題をそれが生まれたきた元の場所である日常生活の場に戻して」議論されたものであり、私の生きていく上での重要な指針となっています。
あとあまり流行ものは好きではないので流行時には読んでいなかったのですが、友人の哲学者に薦められて読んだ「ソフィーの世界」はなかなか良かったです。人類史上の哲学の連綿とした流れを掴むことが出来るだけでなく、一つひとつの哲学的な問題を我々が考えるようにし向ける趣向が凝らされており、良書といえましょう。

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