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密謀

0902181 今年の大河ドラマの影響で、書店は直江兼続に関する本が多く平積みされている。

直江兼続という人物はもともと好きで、これまでも何冊か読んだことはあったが、今回は年明けにお会いした恩師おすすめの

密謀(上・下) 藤沢周平 著

を読んでみた。

謙信没後御館の乱を経て景勝が上杉家当主となったあたりから話は始まる。上巻では寡黙な景勝とそれを支える兼続の関係、豊臣隆盛時代における上杉家の苦悩と駆け引き、兼続が擁する草(忍びの者)の暗躍を中心に描かれる。

そして、秀吉没後より始まる家康の横暴な振舞い、この”義を踏みにじって恥じない人物に対する憤り(本文より)”が兼続と三成を固く結びつけ、やがて密謀を図るに至るあたりから話は面白くなってくる。

私は入社してからの1年半、滋賀県に住んでいたことがある。織田から豊臣、そして関が原の戦いを経て徳川へ時代が移る戦国末期において、最も熱い地であるその滋賀県に住んでいながら当時は歴史に全く興味がなく、今になって多くの名所を訪れることなく東京に来てしまったことを非常に後悔している。

さて、下巻では兼続と三成の謀った通り、家康は会津征討に向かう最中、上方で三成が挙兵したことを知り兵を引き上げる。兼続は三成との東西挟撃の約定通り今こそ家康を討つべしと主張するが、景勝は敵の弱みに付け込んで追撃をかけるのは上杉の作法ではない(本文より)”とそれを許さなかった。その後、北の最上義光と対峙する最中、三成率いる西軍の敗北を知ることになる。

石田が天下を賭けて勝負にのぞんだそのときに、主命とはいえ、かくも遠い北の土地で戦わざるを得なかったわが身の不運が顧みられた。~石田は、友だちが甲斐のないやつ、と思わなかったろうか(本文より)。

三成には他にも友がいた。大谷吉継は私が好きな武将の一人。吉継は三成とともに秀吉に寵愛を受け出世していくのだが、秀吉没後その時代を読み次第に家康に接近していく。しかし、三成に家康への挙兵を持ちかけられ、

まずこの企ては成就すまい。しかし、石田はすでに今度の密事をおれに告げてしまった。それを見捨てては二十年の交わりにそむいて不義となる。もはや死をともにするほかない(本文より)。

と答えて西軍に加担する。結局、吉継は関ヶ原で戦死する。大谷吉継についてこの小説で多くは取り上げられていないものの、傲岸不遜、横柄といわれた三成に対する二人の対照的な友情も見所ではないかと思う。

東軍勝利の後、兼続は江戸城を占拠し家康との決戦を景勝に進言するも、これも却下される。景勝は兼続に

わしのつらを見ろ。これが天下人のつらか。わしは武者よ(本文より)。

腹黒の政治は好まず天下人にも興味はないと告げる。

天下人の座に坐るには、自身欲望に首までつかって恥じず、人の心に棲む欲望を自在に操ることに長けている家康のような人物こそふさわしい。~義はついに、不義に勝てぬのか。そのことだけが無念だった(本文より)。

と思いながらも、兼続は主君である景勝の”謙信の家の名を残す”命に従う。家康への降伏を不服とする家中の者たちに、景勝に代わって兼続は言う。

家の名を残すために、時には耐え難い恥を忍ばねばならぬこともある。それも武者の道である。~殿は忍ぼうと仰せられた。われらも殿に従って耐えねばならぬ(本文より)。

久しぶりに歴史小説を読みましたが、胸が熱くなりましたよ。謙信の頃より伝わりし義を重んじる上杉家の精神を、藤沢周平の素晴らしい文章が実によく表現しています。

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