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悩む力

最近、ちょくちょく討論番組やトーク番組に登場する姜尚中(カン・サンジュン)氏。初めてテレビで見たのは、NHKの”今夜決定!?世界のダンディー30人”なる番組で、映画、音楽、芸術、文学、政財界、ノンジャンルの6部門から20世紀を代表するダンディーを審査員5人が選ぶというもの。審査員の一人、襟の高い白シャツに黒のジャケットが良く似合うこの紳士。”なんて渋い声、話し方をする人なんだ!”とリモコンの手が止まり、結局最後まで見てしまった。

先日、気になっていたこの姜尚中氏の本が平積みされていたので迷わず購入。

悩む力” 集英社新書

著者の最も好きな作家であり、百年前に悩む苦しみを直視した夏目漱石と社会学者・マックスウェーバーをヒントに”悩み”を手放すことなく真の強さを掴み取る生き方を提唱する。

序章 ”いまを生きる”悩み

第一章 ”私”とは何者か

第二章 世の中すべて”金”なのか

第三章 ”知ってるつもり”じゃないか

第四章 ”青春”は美しいか

第五章 ”信じる者”は救われるか

第六章 何のために”働く”のか

第七章 ”変わらぬ愛”はあるか

第八章 なぜ死んではいけないか

終章 老いて”最強”たれ

この本の話を妻にすると、”あなたに悩みなんてあるの?”と一言

こんな私でも一年のある時期、4月から5月にかけてどうも気分が乗らない悩む時期があるのだ。これまで季節の変わり目でホルモンバランスが崩れるのかと自己分析していたが(この辺の発想は理系的)、この姜尚中氏も四季のなかで”春”が最も苦手という。

(春は)卒業式や入学式があるように、人間が何かを卒業し次のステップへ進んでいく季節です。しかし、みなが先へ進んでいくのを横目で見ながら立ち往生したまま動けない人もいます。つまり、春というのはある意味で残酷な季節であるとも言えます。<本文より>

そうなのだ。異動があったり新人が入ってきたりと、周囲がざわつくこの季節。年度が変わっても昨日と同じことをしている自分は、果たして去年と比べて成長しているのだろうかという何ともいえない焦燥感を覚える季節。4月から5月というタイムラグが私らしく少し鈍い点だが、本書で言葉として表現されたことでなんとなくモヤモヤが解消された気がする。

また本編では特に漱石の”心”がよく引用され、個人的にはそれを読んだ高校入学当時を思い出す(我が校では入学前に”心”の読書感想文が課された)。

姜尚中(日本名:永野鉄男)氏は在日朝鮮・韓国人二世として生まれ、当初は日本名を名乗っていたが、早大在学中の訪韓を機に朝鮮名を使用するようになる。ちょうど姜氏が最も悩んでいたと語る時期と重なる。このような背景を持つ氏が”悩み”を語るという点で、必然的に本編全体に説得力を持つ。

ただ、最後の章において

(悩んだ)おかげで私はいま、いまだかつてないほど開き直っていて、大げさに言うと、”矢でも鉄砲でも持ってこい”という気分になることもあります。<本文より>

と、述べられている。これまで共に”悩み”について悩みながら読んできた読者としては”おいおい、自分だけさっぱりしちゃうのかよ”と取り残された気分になる。

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